忍者ブログ
小鬼の日常 およびそれ関連のお話など わからない方は回れ右奨励
[22] [21] [20] [19] [18] [17] [16] [15] [14] [13] [12
[PR]
2024/05/19 (Sun)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

銀桜
2011/02/25 (Fri)
らべの使い魔の妖精が生まれた時の話

最初から扱いが酷いのが・・・

うちに戻ってきた闇天の子供が、自分の身体ほどの大枝を差し出した
子供の身体から外の雨が滴るように、枝からも雫が落ちる
「・・・・?」
無言で問いかける男に、ただ怒ったように枝を押し付ける
良く見ると花が咲いている
季節外れの雨よりも散りやすい花びらのついた花が・・・
「桜・・・?」
男の声に子供は不機嫌そうに頷いた
「どうしたんだ、この季節に」
受け取った男の腕の中の桜から落ちるのは枝についた雨の雫のみで花弁の散る様子はなかった
「失敗した」
子供はバスタオルをかぶるとむくれた顔で乱暴に頭をこする
不審に思い始めた男が枝を振りながら子供に尋ねる
「何を?」
頭を拭くのを止めて子供は其処に座り込んだ
「治そうと思ったんだよ・・」
男が剣のように振りかざした桜の枝は雨の雫を落とされて淡く銀色に輝いた
散ることのない華奢な花弁が花の香りを纏う
「折れてたから、ライがするみたいに魔力を入れてやって治そうとしたのにっ」
かぶっていたタオルを子供は床に投げつけた
「枝掴んで目を開いたとたん花咲いて・・・木にくっつけようとしてもくっつかないんだもんっ」
「・・・枝がくっつきたくなかったんじゃないか?」
男の静かな声も子供の耳には入っていないようだった
「おまけに、咲いた花がよりによって桜だなんてっ!」
どうも子供は桜が嫌いらしかった
「花が散るまで部屋に飾っておくか・・」
男がバケツに水を入れて戻ってきても子供はさっきと同じ場所でむくれた顔で座り込んでいた
その後姿に苦笑しつつ枝を挿すと花弁がこすれて月の音の様なかすかな音を奏でた

数日後――――――
鳥を数羽掴んだ男が家の扉をあけたとたん、室内からカップが飛んできた
驚きながらも受け止めると扉の横の壁にパン用のカッターボードがぶち当たる
どうやら自分を狙ったわけではないと思いつつモノを投げている主を見つめた
部屋の真ん中で仁王立ちになって棚のほうを閉じた目で見つめている子供は、珍しく怒り狂っている様子だった
初めて見る子供の怒りの形相に鳥をテーブルに置きつつ声をかけた
「・・・何をしてる?」
振り返った男はぎょっとして息をのんだ
投げるものが近くになくなったらしく、子供の周りにばちばちと放電する電気の球が数個浮いている
「ラヴ!」
男が声を出したとたん青く光る球が壁に向かって疾走した
そしてふっと壁際で溶ける様に消える
男が魔力で消し去ったのだ
それに気がついた子供は振り向きもせず怒鳴り飛ばした
「邪魔すんな!」
子供の叫び声を避けるように棚から銀色の球がふ~っと男のほうへ飛んできた
「・・・家を壊す気か?」
自分のほうへ飛んできた銀の球を男は軽く手で掴んだ
「・・・これは?」
手を開くと銀の光を帯びた小妖精らしいものがちょこんと座っていた
「そいつ、叩き潰してやる!」
闇天の子供は男の掌のそれに向かって突進してきた
開いてる片手で子供を押さえ、捕まえたそれを上へと持ちあげる
「・・・おい?」
相手の興奮状態を落ち着かせようと声をかけるが聞く様子はなかった
「そいつ、おれのこと「ご主人様」とかぬかしやがるっ、そんなこと言う奴は叩き潰すー!!」
男に阻止されぱたつきつつも子供は怒り狂って男の手の上の小妖精を捕まえようとしていた
「・・・よくわからん」
手の上の小妖精を見ても困ったように闇天の子供の方を見ているだけだった
「おれはー、おれの上に人を置かないし、下にも置かないっ!手下や、家来や、奴隷のように、おれのことご主人様なんていう奴は許さない!」
男にはよくわからない理論だったが、子供は子供なりのポリシーがあって、手の上の小妖精はそれを破ったらしかったのは理解した
「・・・つまり、こいつがお前のことを「ご主人様」と呼んだから家を壊そうとしている・・と?」
その言葉に子供はやっと自分が引き起こしてる状態に気がついた様子だった
「・・・・だって、そいつすばしっこくて・・」
子供は消え入るような声でぶつぶつと呟いて俯いた
「・・・で、これはなんだ?」
子供は突きつけられた小妖精をぶすっとした顔で睨みつけている
「・・・黙ってたらわからん」
「そこの桜から出てきた・・・」
子供の顎が指し示す方向には先日子供が持ってきた銀色の桜の枝が置かれていた
「呼び名をくれというから、んじゃ銀桜っていったら・・・・っ!」
子供が爪が食い込むほど握りこぶしを握り締めた
「ご主人様と呼ばれたわけだ。依り代を作って名前まで与えたら呼ばれて当然だと思うが・・・」
「おれは認めないっ!」
「・・・・・・人じゃない、小さな魔物だ」
男の言い聞かせるような言葉に帰ってきたのは、ぎんと音がしそうな子供の怒りだけだった
「・・・住処に戻った方がいいと思うが?」
話すことは出来なくても理解は出来るらしく、男の言葉に小妖精はしょんぼりと桜の枝の側へ飛んで行きそっと闇天の子供のほうを窺い見た
「失せろっ!」
子供の怒鳴り声に小妖精は小さく俯くとふっと消えた
小さく肩をすくめると、男は怒りの収まらない子供を其処に残し鳥の処理をするために台所へと向かった
男が獲って来た鳥の羽根を荒っぽく抜いている間、向うの部屋では子供が後片付けをしているらしくごとごとと音が響いていた
「・・・手伝う・・・」
毟り終えた羽根を入れた布袋の口を閉める頃、子供がむくれた様子でやってきた
怒りは収まったものの振り返った自分の様子が気恥ずかしい様子だった
「なぁんだ、羽根毟っちゃったんだ・・・って・・あぁ・・」
丸裸の鳥に指を走らせた子供が椅子にすとんと腰掛け鳥を丹念に調べ始めた
「・・・・問題が?」
「・・・これじゃ食えない・・」
溜息をついた子供は閉じた目で指を走らせ、男が毟り残した棒毛を丹念に取り除いていく
暫く向かいで見ていた男が鍋に火を起こした
一羽目を綺麗にぬいた子供が無言で鳥を男に手渡し、次へと取り掛かる
残った毛を焼くために男が鳥を掴んで火の鍋に向いた時目の端を銀の光が横切った
男が横目でそれを追うと先ほどの小妖精が処理のされてない鳥の影から子供の様子を覗いているのが目に入った
が、何も言わず鳥を火にくぐらせる
二羽目の毛抜きがまだ終わらない様子なので、男はそのまま鳥をたわしで洗い、胸にナイフを走らせ内臓の処理を始めた
毛を抜き終わった鳥を横に置きながら子供がぼそっと呟いた
「隠れてても見えるぞ・・?」
小妖精は一瞬首をすくめたが、三羽目の鳥の毛抜きを始める子供が先ほどのように怒っていないのに気がついたらしくおずおずと出てきた
そして子供のしていることに気がついたらしく、同じように棒毛を抜こうと子供の持っている鳥の毛を掴んで引張ろうとした
それに気がついた子供が手を休めその姿を黙って見つめた
小さい妖精は力が殆どないらしく一つも抜くことができないようだった
必死に抜こうとしている姿に小さく溜息をつくと子供は小さく手を振って小妖精を追いやった
「☆..:*・゜☆..:*・゜☆..:*・゜☆..:*・゜☆」
小妖精が何か言ったが男には理解できない言葉だった、が子供には理解できるらしい、子供の拳がものすごい音を立てて机を叩いた
どうやらまた「ご主人様」といったらしい
怯えた様子の小さな魔物は男のほうへふわふわと飛んできておずおずと子供のほうの窺いみる
内臓を取り出し翼の先や首を落としていた男が小さな魔物をちらりと見やった
「・・・名前ではいかんのか?」
男の言葉に小妖精は酷く怯えた表情で身をすくめた
どうやらそれはその小さな魔物にとっては恐れ多いことらしい
「・・・別の呼び方はできないか?」
このままでは台所も被害にあいそうだと思いつつ男は言葉を重ねた
その言葉に小妖精は不思議そうな顔で子供のほう暫く見つめた
「☆..:*・゜☆.」
おずおずとしたその様子の声はなんといったのかは男には理解できなかったが、今度は子供の怒りは爆発しない様子だった
「☆..:*・゜☆.!」
子供の反応に喜んだらしい小さな塊は子供に向かって突進していった
「☆..:*・゜☆..:*・゜☆..:*・゜☆..:*・゜☆!!」
「だから「ご主人」って呼ぶなっていったろーがっ!」
嬉しさのあまり又呼んでしまったらしい小妖精は子供の叩き付けた鳥の下からもう一度同じような声で子供を呼んだ
「☆..:*・゜☆.・・・・」
「・・・それなら百歩譲ってやる」
子供と小さな魔物のやり取りに、何とか収まりそうだなと心の中で呟きつつ男は二羽目の鳥を火であぶり始めた
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
<< ―――アナザストーリー■ HOME ■ 羽化 >>



1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[06/21 シャオ]
[06/21 シャオ]
[06/20 ラヴェンディラ]
[06/12 ラヴェンディラ]
[06/12 文]
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
Designed by TKTK
PHOTO by mizutama



忍者ブログ [PR]