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小鬼の日常 およびそれ関連のお話など わからない方は回れ右奨励
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2011/02/25 (Fri)
らべの前身というか


まあこれが ラヴェの魔力の源
虚空を満たすほどの魔力をコレと共有?してるそんな感じなんですかね?

「貴様、いつまで其処にいるつもりだ!」
そう怒鳴る兵士の顔を女は見上げた
以前、この顔は別の表情で別の言葉を発した気がする・・そうぼんやり思いながら


「ありがとうございますっ、貴方様のおかげで霧が晴れたような気がします」
若い兵士は元気よくそういい、照れたように頭を掻いた
不思議そうに彼の顔を見る女に、兵士は我に返ったように自分の口を押さえる
「ご無礼を。・・貴方様に口をきいてはいけないと言われていたのを忘れてました・・」
反省したように項垂れ出て行く兵士の姿を、女は人形のような笑みを浮かべたまま見送った
男が去り現れた女たちは全て口に覆い布をつけていた
無言のまま部屋を掃除し、男の痕跡を片付けていく
女の周りにいるもので彼女に話しかけるのは先ほどのような偶に現れる客ぐらいしかいなかった
偶に現れる客という者たちは無言のまま彼女の目の奥を見つめ何かを得たように頷き去っていく
彼女自身の知らぬことではあったが、現れる客達は女の瞳を通して何らかの形で魔力を受け取り、力としていくのであった
それさえ彼女に語るものは誰もいなかった
彼女の魔力の坩堝であるその瞳は揺らぐことのない月光の溢れる泉でなければならなかったから
ある意味邪眼と言われるそれをもつ彼女は名前さえ与えられず、感情というものから遠ざけられ、ただのものとして大事に扱われていた
偶に来る客の稀に話す言葉もあるのかどうかも定かでない彼女の心に触れることはなかった


ある日やってきた客はいつもと違っていた
「あんたが先を見せてくれるという女か?」
いきなり話しかけられ、女は不思議そうに目を上げた
にこにこと笑いかける男は、いつも来る客たちのように女の顔を見ないように俯いていたりはしなかった
「美人でよかった。見るに耐えない皺くちゃの婆だったらどうしようかとずっと悩んでいたんだ」
人懐こく話しかける男に答える術を持たない女は、そっと小首を傾げた
「で、どうすればいいんだ?」
笑みを浮かべ聞く男に、女は傍らの椅子を指し示した
「座るのか、それで、次は?」
新しい体験にわくわくしている様子の男の姿にいつもと違う気持ちが起るのをただぼんやりと感じながら、女はいつものように客のその瞳に焦点を合わせる
一瞬の後、男の身体が大きく弾かれたように動いた
そして硬直したように動きを止める
その瞳は彼女の目の奥を見続けたままだった
暫く見続けた男は、大きく溜息をつきながら彼女の瞳の魔力を遮るように瞼を閉じた
「・・・・参ったな」
男は自らの手で自分の目を覆う
「これは禁忌じゃないか・・」
男の言う言葉を理解することもなく女は小さく小首を傾げ、男のその様子を見つめていた
「・・・・・しかし、おかげで助かったと云わざるを得ないのも確かだ」
先ほどまでの浮かれた様子は払拭され、男はすくっと椅子から立ち上がった
そして怖れることもなく彼女の瞳を再び見つめ、その手を握り締めた
触れることはならないと言われたはずの彼女の手を
「感謝する」
短く礼を口にすると、先ほどとは違った様子で部屋から出て行った
女は自分の心に湧き上がったものにどう扱っていいのかわからずに、ただその後姿を見送った

いつもと変わらない日が流れて行き、女も自分の中の変化を忘れかけたころ再び男が訪ねてきた。
「貴方の奇跡をもう一度俺に・・・」
部屋に入るなり禁忌を犯していることに気付きもせず彼は彼女の手を握り締めた。
彼の真剣な眼差しに彼女は立ち尽くしたままで彼に瞳を覗き込ませる
暫く後に彼は彼女をきつく抱きしめた
「この感謝の気持ちをどう伝えればいいのか・・」
誰かに抱きしめられるという心地よさに彼女は酔った
「貴方の名前を教えてくれないだろうか。誰も答えてくれない。」
自分を抱きしめている男を女は不思議そうに見上げた
「な・・まえ・・・?」
その表情に男はやっと合点がいったような表情を浮かべた
「本当に・・・・ないのか」
自分の腕の中でうっとりとしている女には男が浮かべた表情の意味が読み取れなかった
「・・・・・失礼ではないのなら、俺に呼び名を付けさせてもらえないだろうか」
そして男は再び禁忌を犯す
「・・・・・と呼んでも良いだろうか」
彼女の耳元で呟く言葉は彼女の中に変化を起こす
ぼんやりとしていた目の焦点がきちりと合い男を見つめた
「・・・・・。」
「そう、貴方の呼び名。」
「・・・・・。私の呼び名・・・」
まるで赤子のような目で見つめる女を彼はいとおしそうに抱きしめた
「まるで人形から人になったようだな・・」
彼が呟いた言葉は、今起きたことをそのまま言い当てていたが、彼自身気付いてはいなかった

自分の中に起きた変化をどうしたらいいかわからず、女はぼんやりと過ごしていたが、彼女に変化が起きたことに周りのものは築いている様子は無かった
いつものように彼女の力の源を覗きこんでいく客たちも何も気付かなかった
名前を貰い自我の目覚めた彼女が自分たちの心をこっそりと眺めているのに気付いたものは誰もいなかったのだった

ある日訪ねてきた常連の婦人客は上品に作法を守って彼女の瞳を覗き込んだ
客は必要な情報を得、更に力を得ようとしたその時、銀の泉は堅い鏡と化した
怪訝に思いながらきっと自分が作法を間違えたに違いないと婦人はそう解釈して何も言わずその部屋を後にした
婦人が立ち去り部屋も片された中女は一人立ち尽くしていた
こっそりと気付かれないように眺めていた婦人の心の中に、自分に名前をくれたあの男がいた、それだけのことが自分の中におこした感情というものに女は途方に暮れていた
そしてタイミング悪く其処へ男がやってきたのだった
「・・・・・」
自分の与えた名前を呼び、彼女を抱きしめその瞳を覗き込んだとき
男は何を思ったのだろう
いつもと違う瞳の輝きに彼はそのまま動きを止めた
与えるだけだったその魔力の泉は天空へ立ち昇る竜の力にも似た攻撃性を持って彼の中へとねじ込まれていった
もちろん彼女は攻撃をするつもりなど毛頭なかった
ただ、先ほどの婦人との関係を知りたい、それだけのことだった
加減の知らないその力が一体何をもたらすのか彼女自身も知らなかった

客がなかなか出てこないのに痺れを切らしたのか、身の回りを世話する者たちが入ってきた
とたん、屋敷中を震わせるような悲鳴が上がる
意識を破壊された男と、其処に座り込み不思議そうに彼の顔を見つめている女との姿が其処にあった
彼女には知る術もなかったが彼は彼の世界では大切な人だったらしい
彼女と二人でいる間、彼が禁忌を犯していた事を知るものは彼女のほかに知るものはなかったが、彼女はそれを禁忌だと言うことさえも知らなかった
そして決定される

英雄の精神を破壊した魔女


「此処が貴様の永遠の牢獄だっ」
いつか彼女に礼を述べたその口が彼女を罵り虚無の空間へと追いやる
「・・・・・あの人は・・・・?」
あのときからずっと聞きたかったことを彼女はポツリと口に出した
「・・何をっ・・・貴様があの方の心を破壊したんだろうっ!あの方は俺たちの英雄だったのにっ。貴様があの方を殺したんだ、この魔女め!」
女は若い兵士の罵る言葉の殆どが理解できなかった。
ただ、彼はもうこの世にはいないのだ、そしてそれをしたのは自分なのだということだけを理解した
女は静かに虚無の空間へ足を下ろす
背後でゆっくりと次元の穴が塞がっていく
何もない空間に男の名前を呼ぼうとして彼の名前を知らないことに女は気がついた
「・・・・・どこ・・・?」
彼女の顔を見て微笑んだその顔を求めて彼女はゆっくりとあたりを見回した
闇さえもない虚無の空間
男の微笑を思い浮かべ其処へ座り込む彼女から陽炎のように月の光に似た魔力が虚無の空間へと流れていく
あの部屋で彼を待っていたように女は彼を待つことにした
彼がこの世から消えたということと迎えにこれないということが彼女の頭では結びついていなかった
誰も彼女に物事について教えることがなかったから
自分が正気かも狂っているかもわからない虚無と言う空間の中で彼女はぼんやりと彼を待ち続ける
密やかにその空間を自らの魔力で満たしながら




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