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小鬼の日常 およびそれ関連のお話など わからない方は回れ右奨励
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羽化
2011/02/25 (Fri)
これはどうすっかなーとおもったけど
形態変わった話なんでやっぱり必要かなーと

らべはほんとに
いろんな人に助けられて生きてますな・・・
ありがたいことです

闇天の子供が人知れず密かに小さな決意をした夜
子供の住まいに深く月の光が差し込んだ
窓の影を超え、それは子供のところまで生き物のように深く差し込み、子供の姿を照らした
命を持った生き物のような月の魔力をを伴った光は子供の姿を包み込み、その額を中心として徐々に吸い込まれるように消えていく
そして子供を包んでいた光は消え、いつもの夜の姿が戻ってきた
その静かな夜の中で、子供が寝苦しそうに身をよじった
何度かの身じろぎの後、跳ねる様に飛び起きる
「・・・・?」
自分がなぜ起きたのかわからずに、闇天の子供はあたりを見回した
が、込み上げるものを抑えるかのように胸と口を押さえた
すさまじい気持ちの悪さが彼女を襲っていた
―――いったい何が?
思い当たることは何もなかった
しかし、この感じは以前に体験したような気がした
翼が生えた日の晩―――子供はぼんやりと思い出す
(飢えて、どうしようもなくて店売りのものに手を出してしまった晩
あの夜もこんな感じだった・・あの時は焼きごての痛みのせいだと思っていたけど)
込み上げる悪寒に子供は身を折り息を荒げ耐えようとしていた
助けて、という言葉の代わりにごめんなさいと言う言葉が口から漏れる
あの時と同じように、きっとこれは何かの罰なのだ
闇天の子供はそう考えた
よくわからないけど、自分は何か悪いことをしたのだと
謝るべき相手もわからず、何について謝るのかもわからず、
助けてと、誰かに助けを請う代わりに彼女は苦しさに耐えながら誰にともなく謝り続けていた
それだけが、この苦しみから逃れるためのすべだとでもいうように・・

何かにすがるものを探すかのように子供の視線は宙を彷徨う
普通の子供なら助けを求めるべき親というものの存在を彼女は持っていなかった
そういうものがあるという知識があってもそれが普通の子供に何をするものかということを彼女は理解してなかった
そしてその親の代わりに彼女に保護を与える腕も今まで存在していなかった
最近、そういう存在を知りはしたが、それはこの世から消えていた
「・・・ラ・・」
その存在の名前を呼びかけて、子供は激しく首を振った
これ以上迷惑をかけてはいけない
彼が自分にしてくれたことを思い出すとこの場で名前を出すことさえ躊躇われた
苦しみに必死で耐える子供を内部から激しい衝撃が襲う
「あ・・・・くはっ・・・」
今まで堪えていた声をついに子供は漏らした
封印の魔方陣の描かれた背中がぼこっ、と動く
魔方陣が薄れ、現れる一対のこぶ
「あーーーーー!」
子供の絶叫とともに、背中のこぶが弾けた
現れたのは淡い青みががかった数枚の羽根
子供の血に染まった翼は子供の叫び声を糧にするかのようにゆっくりと大きくなっていく
身体を引き裂かれる痛みを、子供は気を失うこともできずに耐えていた
意識を失うことさえ許さないその痛みに朦朧となりながら子供はぼんやりと考えていた
―――いちゃいけないのにいるから、神様がおれを引き裂いているんだ
それに答えるかのように、彼女の背中にもう一対のこぶが蠢く
「あ・・・あっ・・・・」
前の羽根の出現が生み出した痛みが続く中、新しい痛みが彼女を襲う
声を出すだけでは耐え切れず涙を流す子供の背から、新しい羽根が、彼女の背中を突き破るように姿を現していた
―――存在するからの罰
その極論に達していた彼女は痛みで震える手で元から生えていた翼から羽根を引き抜いた
集中することも難しいその状態で、羽根に魔力を送り込む
手にした羽根はいつも以上に月の光を含んだように輝いた

「ラヴ・・?」
手にした硬質化した羽根を見つめる彼女を誰かが呼んだ
痛みを一瞬忘れ驚いたように声の方向を見る
透き通るような姿で銀髪の男が佇んでいた
「何が・・起こってる?」
めきめきと音が聞こえそうな勢いで伸びる羽の苦痛が再び彼女を襲う。唇をかみ締めて痛みを堪えるため、現れた男の問いに答えられず、ただ首を横に振った
「羽が・・・生えてきているのか・・・?」
男の声に子供は朦朧となった意識の中ぼんやりと顔を上げた
「・・・は・・ね・・?」
その言葉を聞くまで、子供は自分の身体に起こっている変化に気づいてなかった
「そのせいで・・・・?」
痛みにあえぎながら意識をしゃんとさせようと子供は再度頭を振った
彼女に近づきかけた男が何かに阻まれるように歩をとめた
二人の間を隔てる空間を手探りで探りながら、気遣うように声をかける
「痛むんだな。大丈夫か?」
男の声に子供は必死になって笑顔を浮かべようと努力した
「・・・・・へ、いき・・」
彼女が何とか普通にと出した声は、痛みによって途切れる
子供が何か特殊な空間に囲まれているのを確認した男は見えない壁に両手を押し当てた
「相変わらず、うそつきだな・・」
男の両手から力が放出される
それは彼女を囲う空間とせめぎ合ってきれいな光を生み出した
それを目の端に捕らえながら、絶え間なく襲う痛みに耐える彼女に、男は続けて声をかけた
「こういうときは痛いって言っていいんだ・・・助けてくれとどうして言わない・・」
「言って・・・・いいの?だって、これは・・・」
言いかけた彼女の言葉をさえぎって、最初に生え出した翼がその姿の全てを露わにした
―――これは、罰ではないの・・?逃れることを望んでもいいの?
その疑問を考える余裕は今の彼女にはなかった
なんにせよ、今この瞬間激痛が襲い、それから逃れるすべはないのだからそれに耐えるしかないのだ
壁を破ろうとする男の方へ目にも微かな月の光似た銀色の光が集まりだしていた

月の光に似た保護膜につつまれ痛みに耐えていた闇天の子供がふと、顔を上げた
「・・・・離れて・・」
絞り出すような声が漏れるより先に男は魔力の放出をやめ、見えない壁から体を離した
その空間に集まっていた銀の光が槍のように突き出して来る
「・・・ラヴを守っているのか・・?」
突き出した光は男が穴を開けていた場所をさらに厚く覆っていく
それを見ていた子供はほっとしたように溜息をついた
そしてゆっくりと顔を上げると青白い顔ににっこりと微笑を刻んだ
「・・へいき・・・大丈夫だから・・」
厚くなった膜に手を当て男は中の様子を覗き込む
にっこりとこちらを見る瞳は閉じられていた
ひざの上に落ちた腕の先にある硬質化した羽根がその足を傷つけていたがぴくりとも動く様子はなかった
「ラヴ・・・?」
安心させるための笑みを浮かべ、そしてやっと子供は気を失うことができたようだった
「ここから救わなくてもいいのならほかにも方法はある・・・」
男はそう呟くと子供を取り巻く壁に手を当て同調を始めた
「生身の身体じゃ無理だろうけどな・・。・・・・ん?」
幽体の姿に戻り、壁を通り抜けようとした男が怪訝そうに声を上げた
思ったより複雑な構造だった
彼女を取り巻く壁はここの次元だけではなくさらに何層もの次元にわたって防御をしている
―――ち、面倒な・・
内心の焦りを押しとどめ、男はそれぞれの次元の壁を越えていく
子供の横に辿り着いた時、男はかなりの魔力を使い果たしていた
「ラヴ・・?」
微笑を浮かべた子供からの答えはなかった
そのとき彼女の背中の翼が背から伸び始めた
子供の微笑が苦痛に歪む
再び感じ始めた痛みにぼんやりと目を開けた闇天の子供は自分のそばに立つ男に気がついた
「・・・ごめん・・ね?」
うっすらと微笑もうとした唇から謝罪の言葉が漏れる

「何を謝る・・?」
男は歩み寄り子供の頭に手を置いた
かき上げた髪の毛の間から額から突き出た小さな角が姿を現す
その異変に気づいていないであろう子供は痛みに途切れる言葉を必死につなごうと努力していた
「辛そうなとこ見せて・・心配させた・・・・・。無理させたから・・。だから・・ごめ・・・」
「俺がしたかったからそうしたんだ。気にするな・・・」
男は子供の頭を胸に抱き寄せ安心させるように頭を撫でてやる
そうしながら彼女の背中を覗き込んだ
新しく生えた羽の一対はまだその姿を全ては現してはいないようだった
「まだ、痛むか?」
自分に寄りかからせた子供に男は声をかける
男の見ている前で音さえ聞こえるような勢いで羽は伸び続けていた
子供の身体がその度に打ち震えるのが男自身の身体を通して伝わってくる
「・・・・へいき・・」
子供はそう呟くように言った
「またそういう強がりを・・」
その言葉に苦しそうな息のしたから必死に言葉を紡ぎ出そうとしていた
「大丈夫・・・きてくれたから・・・もうへいきだよ・・・?」
その言葉を証拠付けるかのように笑みを浮かべて見せようとする子供の手が男の手に爪を立てていた
気づいていないらしいその力は子供の言葉を裏切るように遥かに強く、深く爪あとを刻んでいた
「うそつき・・」
男の言葉にうっすらと笑みを浮かべる子供の顔は青白く、痛みを耐える為の汗が玉のように浮かんでいた
「・・・・ねぇ・・これは・・罰ではないの・・・・・?」
子供はやっとの思いで疑問を口に出した

子供の頭を撫でていた手が止まる
「・・・何の罰だ?」
子供は男の腕を掴んだまま無言で首を振る
背から伸びる羽の痛みになかなか声を出すことができない
「わかんない・・知らないうちに・・・・・酷い事した・・・かも・・・」
痛みに耐えかねて頭を沈み込ませながら途切れ途切れに呟く言葉は不確かだった
「・・・何の罪もない者に罰は与えられない」
男の手が慰めを与えるように再び子供の頭を撫で始める
―――たとえ本当に罪を犯していたとしても・・おまえが背負うことは決してない・・
男の心の中の呟きは苦しみに耐える子供には到底読み取ることはできなかった
「あっ・・・!」
突然子供が叫び声を上げ、男の腕に爪あとを残す
後から生えた羽がその姿を全て現したのだ
「大丈夫か・・?」
男の声に子供はやっと本当の笑みをその口元に浮かべた
「だいぶ・・ましになった・・・・」
その顔色はまだ白かったし、四肢は痛みに震えていたけれど、確かに先ほどよりは痛みは軽くなってきているようだった
「・・・よく頑張ったな・・」
子供の頭を撫でる手にわずかに力をこめる
子供は安心したように微笑んだ
その手に握られていた硬質化した羽根を男はそっと取り上げる
「・・・・罰なら・・と、思って・・」
男の手の中で普通の羽根に戻っていくさまを痛みに麻痺した頭でぼんやり見つめながら、子供はぽつりと呟いた
「俺と同じになっては駄目だと・・いったろ?・・・これは罰ではなく成長だ・・」
手の中の羽根を魔力で粉々にして男は子供の肩を抱き寄せた
「・・ん。罰じゃないなら・・がんばる・・・。身長も・・のびるかな・・・?」
答えた子供の翼はほとんどの成長を終えかけていた
痛みもなくなってきたらしく、子供は男の腕の中で静かな寝息を立て始めている
「・・・成長・・か・・・」
疲れきって眠る子供の頭を撫でながら男はポツリと呟いた


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