小鬼の日常 およびそれ関連のお話など わからない方は回れ右奨励
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記憶―桜花―
2011/02/25 (Fri)
コレも幼い頃
ラヴェが桜をあまり好きではない理由 ですかな
この記憶のせいで銀桜は扱い酷いですなww
ラヴェが桜をあまり好きではない理由 ですかな
この記憶のせいで銀桜は扱い酷いですなww
淡い淡い薄紅色の花弁
それが初めておれのいる奥までやってきたものだった
窓も無く、土を掘った洞窟のようなところ
外との境は頑丈な扉が立ちふさがっていた
歩くことさえおぼつかない小さなおれには周りの壁となんら変わりなかった
唯一換気のためか、明り取りの為か、高いところに小さく土をくり貫いてあった
花弁はどうもそこから入ってきたらしい
見た事もない綺麗なものをおれは夢中になって見つめていた
触れば消えてしまいそうで、でも触れたくてどうしようと手を伸ばしたり引っ込めたりしていたところ
―――バタン!
大きな音がして開く事のない扉が思い切り開いた
そしてさっき入ってきた花弁が辺りを埋め尽くすかのように大量に舞い込んできた
嬉しくて手を伸ばして捕まえようとするおれを誰かが抱き上げた
おれの掌に数枚つかまれた花弁の色によく似た肌の色をした女が手を伸ばしておれの頭を撫でた
「・・・・こんな小さな子を閉じ込めておくなんて、絶対間違ってるわ・・・」
まだ言葉のよくわからなかったおれは聞き取ろうとして女の顔を見つめた
そんなおれに微笑みかけると女はおれをそこから外へと連れ出した
とても広い世界、風の匂い初めてのものばかりでおれは驚いた顔をして辺りを見回していた
そしてその中に驚愕に目を見開いた男の顔を見つけた
「フラウ!それは禍だろう!なんで禁を破った!」
大声を出してこちらへ足音も荒く走り寄ってくる
手を伸ばしおれを掴み取ろうとした男から身を翻すと、フラウと呼ばれた女は怒ったように男に向き直った
「禁ですって?こんな小さな子供をあんなところに閉じ込めることがどう正しいと言うの?あなたちゃんと説明できるというの?」
おれは女の腕の中で困ったように二人の顔を見比べていた
「そいつの背と額に描かれた封印、禍であるという証拠じゃないかっ」
「幼子に禍を乗せて人柱よろしくうち捨てる呪いがあることは知ってるわ。けどね、うちの村はやっていないのよ?それならこの子はただの捨て子でしょう?どうしてあんなところに閉じ込めるのよ?」
「そいつが他所の集落の禍を背負っているからだ。禍を村へ持ち込むのは許さんぞ」
静かな別のものの声が女の向こうから聞えた
言い争っていた二人がそちらを一斉に振り返る
見えないのはわかっていたが、おれも一応そっちを見ようと努力してみた
「長老様・・・・だって・・」
言いよどむ女から歩み寄ってきた老人はひょいとおれを抱き取った
「さて。悪いがな、また戻ってもらうぞ」
話しかけた老人におれは掌の花弁を見せた
老人は無言で目を細め、またあの厚い扉をあけ、おれを土で出来た庵の中へ降ろした
「災禍を背負ったお前を村へ入れるわけにはいかん。かといって幼子の姿をしたぬしを滅してしまうことが出来るほどわしも無情にはなれぬでな。生殺しのような仕打ちをするわしを恨んでくれてかまわぬぞ」
言葉を解さないおれにそういうと、老人は男女の待つ外へと歩き出した
部屋中の花弁をみておれはよたよたと老人に近寄り服の裾を引いた
振り返った老人に手の中の花弁を差し出した
老人ははっとしたような表情を浮かべたが、すぐ表情を引き締めると首を横に振った
「わしはいらんよ」
老人は外へ出、頑丈な扉が再び広い世界を遮断する
おれはよたよたといつもの場所に戻り、手の中の花弁を飽きることなく見つめていた
許可を取ったのか、それとも人目を盗んでか、女はそれからちょくちょくおれのいる場所へ来るようになった
供え物のような食事ではなく、彼女の手作りらしい食べ物や、ほんの小さな遊び道具だったりを手渡しに
その時だけおれはおもての世界に連れて行ってもらえた
連れ出してくれる彼女は、外の世界と同じように柔らかくて綺麗だと思った
初めてあったときみた花弁がまた舞っていた
壁のような扉を何とか開けられるようになってきたけれど、開けちゃいけないんだと知っていたから自分から開けることはしなかった
その日フラウは食べ物をバスケットに入れてきた
ぽてぽてあるくおれの手を引いて小高い山の上まで根気よく歩いた
「あそこがね、私たちの村」
てっぺんの桜の花弁が舞い散る中で彼女は麓を指差した
「そしてあのあたりがあなたのおうち」
ちょっと離れた川向こうを指差す
どちらも霞んではっきりとは見えなかった
よく見ようと踏み出しかけて、斜面を転がりかけたおれを誰かが背後から掴み上げた
最初にフラウにあった時に言い争っていた男だった
彼女は気づいてなかった様子だったが、おれは彼女がくるときにはよく木の陰とかに姿を見かけていた
「何でこんなところにいるの?!」
彼女は驚いた様子だったが、今日も背後からついてくる気配におれは気がついていた
「お弁当、多めに作ってきてよかったわw」
憮然とした顔でそこに座り込む男にフラウは食べ物を勧めた
邪魔をしないように、と花弁を集めて遊んでいるおれの耳に二人の会話が聞えていた
「あのね、私成人したら川の辺に住もうと思うの。父母の面倒は兄がいるしね・・」
「・・・・あれのためにか?」
「・・・あれっていわないでよ、ちゃんと聞えてるのよ?・・・そう、あの子の面倒を見ようと思うの、あした長老に相談するつもりなの」
「一人で・・・何が出来るんだよ」
「・・・・・」
「何でおれに相談しないで決めちゃうんだよ」
「・・・・いつだって反対するじゃない」
「決心が確かか確かめてるだけじゃないか。やるって決めたらちゃんと手助けする」
「・・・・あの子の事嫌いなくせに・・」
「禍だからだ。あれは別になんとも思ってない」
「・・・・」
「村とお前の間に立つという建前も出来るしな」
「あなたも村はずれに住むの?」
苦笑して呟くフラウに男はぼそりといった
「お前を護る防波堤のカケラぐらいにはなれるだろ・・」
不思議そうに見る女から男は目をそらす
「みなまで言わせるな、ほんと鈍い女だな」
会話の内容までよくわからないおれでも、そのとたん涙を流しだしたフラウの様子には気がついた
遊ぶのを中断して、彼女を泣かせた男を叩きにいく
「まて、おれは彼女を虐めた訳じゃな・・・」
男がおれに手を出すことはなかった
叩かれるままの男から彼女の手がおれを引き離す
「大丈夫、彼が悪いんじゃないの・・
仲良く・・これからずっとしよう・・・」
おれを抱きしめて微笑みを浮かべながらなお泣き続ける彼女をおれは不思議な気持ちで見上げていた
それが初めておれのいる奥までやってきたものだった
窓も無く、土を掘った洞窟のようなところ
外との境は頑丈な扉が立ちふさがっていた
歩くことさえおぼつかない小さなおれには周りの壁となんら変わりなかった
唯一換気のためか、明り取りの為か、高いところに小さく土をくり貫いてあった
花弁はどうもそこから入ってきたらしい
見た事もない綺麗なものをおれは夢中になって見つめていた
触れば消えてしまいそうで、でも触れたくてどうしようと手を伸ばしたり引っ込めたりしていたところ
―――バタン!
大きな音がして開く事のない扉が思い切り開いた
そしてさっき入ってきた花弁が辺りを埋め尽くすかのように大量に舞い込んできた
嬉しくて手を伸ばして捕まえようとするおれを誰かが抱き上げた
おれの掌に数枚つかまれた花弁の色によく似た肌の色をした女が手を伸ばしておれの頭を撫でた
「・・・・こんな小さな子を閉じ込めておくなんて、絶対間違ってるわ・・・」
まだ言葉のよくわからなかったおれは聞き取ろうとして女の顔を見つめた
そんなおれに微笑みかけると女はおれをそこから外へと連れ出した
とても広い世界、風の匂い初めてのものばかりでおれは驚いた顔をして辺りを見回していた
そしてその中に驚愕に目を見開いた男の顔を見つけた
「フラウ!それは禍だろう!なんで禁を破った!」
大声を出してこちらへ足音も荒く走り寄ってくる
手を伸ばしおれを掴み取ろうとした男から身を翻すと、フラウと呼ばれた女は怒ったように男に向き直った
「禁ですって?こんな小さな子供をあんなところに閉じ込めることがどう正しいと言うの?あなたちゃんと説明できるというの?」
おれは女の腕の中で困ったように二人の顔を見比べていた
「そいつの背と額に描かれた封印、禍であるという証拠じゃないかっ」
「幼子に禍を乗せて人柱よろしくうち捨てる呪いがあることは知ってるわ。けどね、うちの村はやっていないのよ?それならこの子はただの捨て子でしょう?どうしてあんなところに閉じ込めるのよ?」
「そいつが他所の集落の禍を背負っているからだ。禍を村へ持ち込むのは許さんぞ」
静かな別のものの声が女の向こうから聞えた
言い争っていた二人がそちらを一斉に振り返る
見えないのはわかっていたが、おれも一応そっちを見ようと努力してみた
「長老様・・・・だって・・」
言いよどむ女から歩み寄ってきた老人はひょいとおれを抱き取った
「さて。悪いがな、また戻ってもらうぞ」
話しかけた老人におれは掌の花弁を見せた
老人は無言で目を細め、またあの厚い扉をあけ、おれを土で出来た庵の中へ降ろした
「災禍を背負ったお前を村へ入れるわけにはいかん。かといって幼子の姿をしたぬしを滅してしまうことが出来るほどわしも無情にはなれぬでな。生殺しのような仕打ちをするわしを恨んでくれてかまわぬぞ」
言葉を解さないおれにそういうと、老人は男女の待つ外へと歩き出した
部屋中の花弁をみておれはよたよたと老人に近寄り服の裾を引いた
振り返った老人に手の中の花弁を差し出した
老人ははっとしたような表情を浮かべたが、すぐ表情を引き締めると首を横に振った
「わしはいらんよ」
老人は外へ出、頑丈な扉が再び広い世界を遮断する
おれはよたよたといつもの場所に戻り、手の中の花弁を飽きることなく見つめていた
許可を取ったのか、それとも人目を盗んでか、女はそれからちょくちょくおれのいる場所へ来るようになった
供え物のような食事ではなく、彼女の手作りらしい食べ物や、ほんの小さな遊び道具だったりを手渡しに
その時だけおれはおもての世界に連れて行ってもらえた
連れ出してくれる彼女は、外の世界と同じように柔らかくて綺麗だと思った
初めてあったときみた花弁がまた舞っていた
壁のような扉を何とか開けられるようになってきたけれど、開けちゃいけないんだと知っていたから自分から開けることはしなかった
その日フラウは食べ物をバスケットに入れてきた
ぽてぽてあるくおれの手を引いて小高い山の上まで根気よく歩いた
「あそこがね、私たちの村」
てっぺんの桜の花弁が舞い散る中で彼女は麓を指差した
「そしてあのあたりがあなたのおうち」
ちょっと離れた川向こうを指差す
どちらも霞んではっきりとは見えなかった
よく見ようと踏み出しかけて、斜面を転がりかけたおれを誰かが背後から掴み上げた
最初にフラウにあった時に言い争っていた男だった
彼女は気づいてなかった様子だったが、おれは彼女がくるときにはよく木の陰とかに姿を見かけていた
「何でこんなところにいるの?!」
彼女は驚いた様子だったが、今日も背後からついてくる気配におれは気がついていた
「お弁当、多めに作ってきてよかったわw」
憮然とした顔でそこに座り込む男にフラウは食べ物を勧めた
邪魔をしないように、と花弁を集めて遊んでいるおれの耳に二人の会話が聞えていた
「あのね、私成人したら川の辺に住もうと思うの。父母の面倒は兄がいるしね・・」
「・・・・あれのためにか?」
「・・・あれっていわないでよ、ちゃんと聞えてるのよ?・・・そう、あの子の面倒を見ようと思うの、あした長老に相談するつもりなの」
「一人で・・・何が出来るんだよ」
「・・・・・」
「何でおれに相談しないで決めちゃうんだよ」
「・・・・いつだって反対するじゃない」
「決心が確かか確かめてるだけじゃないか。やるって決めたらちゃんと手助けする」
「・・・・あの子の事嫌いなくせに・・」
「禍だからだ。あれは別になんとも思ってない」
「・・・・」
「村とお前の間に立つという建前も出来るしな」
「あなたも村はずれに住むの?」
苦笑して呟くフラウに男はぼそりといった
「お前を護る防波堤のカケラぐらいにはなれるだろ・・」
不思議そうに見る女から男は目をそらす
「みなまで言わせるな、ほんと鈍い女だな」
会話の内容までよくわからないおれでも、そのとたん涙を流しだしたフラウの様子には気がついた
遊ぶのを中断して、彼女を泣かせた男を叩きにいく
「まて、おれは彼女を虐めた訳じゃな・・・」
男がおれに手を出すことはなかった
叩かれるままの男から彼女の手がおれを引き離す
「大丈夫、彼が悪いんじゃないの・・
仲良く・・これからずっとしよう・・・」
おれを抱きしめて微笑みを浮かべながらなお泣き続ける彼女をおれは不思議な気持ちで見上げていた
泣き止んだフラウと空っぽになったバスケットを持っておれたちは山から降りた 「明日も・・こよう」 彼女は誰にともなくそう何度か呟いてた 途中拾い集めた花弁を宙に放り上げながら三人でゆっくり歩いた おれの居場所の前で別れる 村のある方向へ手を繋いで去っていく二人の後姿が何とはなしに嬉しくて、彼女のくれたなんだかよくわからない人形を抱きしめて部屋の中をころころとしていた その夜 なにかいつもと違う感じがして、おれは禁止されていた扉をこっそりと開けてみた いつも暗い森 そのむこうに鮮やかに光り輝く赤い光が踊っていた その日見に行った桜より鮮やかで禍々しささえ感じる鮮やかな赤い光の乱舞 それはおれのいるところまでその花弁を飛ばしてきたが、桜のように綺麗な花弁が掌に残らず、熱い傷と黒い煤を残すだけだった 不安な気持ちのまま森向こうを見ていたが、寝ていたらしく 気がつくと森は白い煙に包まれていた 昼過ぎになってもフラウがくることはなかった 急かされる気持ちで昨日歩いた道を一人で歩いてみる 華やかな桜の花弁の舞い散る中、昨日彼女が指し示した村の方向を覗き込む 昨日以上に白く霞んで見えなかった 幼いおれにはそれが火が消えた後の煙だと言うことは到底わからなかった 小さな溜息をついておれは前の日の様に花弁を集める まるでフラウの肌のようだと思いつつ 一人だと時間の過ぎる感覚がきっとなかったのだろう ふと、目をあけると天空に月が何かいいたげに輝いていた 山のように集めた花弁、それが彼女に変わることはなかった 珍しく誰かが馬で道をやってくる気配がして、おれはそちらをむく 「・・・魔物か?」 現れた男はそういった 初めて見る人だった 「冗談だ。あの村の生き残りと言ったところか・・親が逃がしたんだろうな・・・」 不思議そうに見上げるおれを、彼は片手で持ち上げた 「名は?」 「・・・・禍-Evil-・・」 一番呼ばれてた言葉をぽつりと呟いた 「なるほど、おれに相応しい連れということか」 男は乗ってきた馬の前におれを置くと、おれの集めた花弁を蹴散らして山を進んだ ―――そうか、もうフラウには会えないんだ 舞い散る花弁を見ながらおれはそう理解した 彼女があの仏頂面の男と仲良く手を繋いで、あの森を越えてくることはもう二度とないのだと 別れを告げるかのように花弁は降り続けていた |
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