忍者ブログ
小鬼の日常 およびそれ関連のお話など わからない方は回れ右奨励
[19] [18] [17] [16] [15] [14] [13] [12] [11] [10] [9
[PR]
2024/05/19 (Sun)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2011/02/25 (Fri)
OLに来る前の生活状況になりますか

その一部というか


でも多分確か
一番最初に書いたのがこれじゃあなかったかと思う

―――どすん!!
安宿の壁に闇天の小さな子供の身体が叩き付けられた。下に滑り落ちたその身体は暫く動くことが無かったが。やがてむせるように身を折り咳き込んだ。
「お前があの時失敗しなかったら!今日はもっといい宿に!」
酒で顔を赤くした若い男は床に小さくなった闇天に指を突きつけつつそうわめき続けた。
暫くして。大人しくしている相手にわめくのに疲れたらしく、ふらつく足で男はベッドに向かい転がった。床にまるまって身動きしなかった闇天の子供はゆっくりと身を起こす。
ベッドで鼾をかいて寝ている男はこの町に来る前に知り合った相手だった。賞金稼ぎをしているという男の目標物の気を逸らすのを頼まれたのだったが、その一瞬ではこの男は仕留めることが出来なかったのだ。相手の言うことが間違っているのは知っていたが、あえて指摘する気にもならなかった。
(しかたない。次の時は目標を気絶させるか・・)
身体の痛むところをさすりつつ、ふらつく足で部屋に置かれたテーブルに向かう。
(腹減った・・)
テーブルにあるのは蓋の開いた数本の酒瓶だけ。闇天の子供は背伸びをすると瓶を集め、グラスに中身をあける。乱暴に飲み捨てたらしい瓶を集めると、グラスを満たすほどの酒が集まった。闇天の子供は小さな手で、そっと大事そうに抱えると入り口のそばへ行き、座り込んでちびちびと飲み始めた。
(弱いのが入り口を護る・・・)
今の連れに会う前に教わったことを忠実に守っていた。もとより、この部屋の主が、この子供にたった一つのベッドを譲るわけなど無いのだが。子供はグラスを大事そうにあけると、其処に蹲り自らの肩を抱きまどろんだ。男の鼾からすると昼前までは眠ることが出来そうだった。


夜はいつも酒場になる宿屋の下も、昼間は食事の取れる店だった。バイキング形式らしく料理の並ぶカウンターに何人もの大人が群れている。自分の身体では踏み潰されるか誰かを転ばすかだと心得て子供は近くの席にひっそりと座っていた。カウンターの向こうで店の店員らしい女が自分に向かって手招きしているのに気づいて小さく小首を傾げた。尚も笑顔で手招きをする女に、食料を確保し人の群れから離脱した連れを気にしつつ近づいた。
「あんた、連れは?」
女の問いに小さく頭をかしげ、席に着いた男を指し示す。食料争奪戦の戦利品に齧り付いてる男の姿に女は呆れた笑いを浮かべた。
「親じゃ・・ないよね?」
小さく頷く闇天の子供に女は手早く紙に包んだパンを子供に押し付けた。怪訝そうに見つめる子供に、女はしかめっ面をしてみせる。
「あの手の男は何人も見てるさ。あんたみたいな小さいこの世話なんかにとっても不向きな奴らをね。この町にいる間、困ったことあったらあたしんとこ、おいで。」
そういって笑いかけると、女は小さな子供の頭を撫でて背中を叩く。闇天の子供は貰ったパンを鞄に詰め込むと殆ど食べ物を平らげた連れの元へと小走りに近寄った。
「・・ちっ。今更来ても残ってねぇぞ。」
男はそういうと、満足そうに自分の腹を撫でつつ、食料が載っていたらしい皿を子供に向かって押しやった。大きな皿の片隅にデニッシュと果物が残っている。闇天の子供は大人しく座ると静かに食べだした。口に押し込まれても食わないとそういっている甘いデニッシュを男は子供に出会ってからいつも頼んでいた。それはたとえ昨日のように子供と諍いを起こしている最中でも変わらなかった。そのことを思うと子供の口元にひっそりと微笑が浮かんだが、誰も、本人さえもそれに気づかなかった。


裏通り。
一癖も二癖もありそうな怪しい大人が行き交う道の隅で蹲り、小さな闇天の子供は連れが正面の扉から出てくるのを大人しく待っていた。やがて重そうな扉をあけ、得意そうな顔をした連れが出てくるのをみて、子供はその場に立ち上がった。子供の連れは子供の前まで来るとにやりと笑みを浮かべ、手の中に握りこんだ水晶玉を子供に見せた。玉の向こうに一人の若い人物の顔が映し出される。
「覚えろ。こいつが今度のターゲットだ。」
頷きその顔を覚えこみつつ闇天の子供は眉をしかめた。そのターゲットはいつもの犯罪者とはどうも違って見えた。
「・・・頭使う奴・・?」
「知るか、そんなこと。俺が幸運だっただけだろ。こんな弱そうなのに金額いいんだ。誰かに取られる前でよかったぜ。」
「直接・・じゃないの?」
「ああ。他のと一緒に混じってたんだ。神様も捨てたもんじゃないらしい。」
嬉しそうにターゲットの移し絵をしまいこむ連れをみつつ、闇天の子供の眉は更にしかめられる。普通高額な賞金首は腕のいいヒットマンに直接売り込まれる。子供の連れのように腕の悪い物が漁る中に間違っても入れられることは無いのだ。わざと入れられたとすれば何かそれなりの理由があるはずだった。だが。闇天の子供の連れは、そのことに気がつく様子も無く無邪気に喜んでいる。
(仕事が済んだ後すぐ出れば大丈夫かな。)
闇天の子供は諦めたように小さく溜息をつくと、ターゲットを捜し歩き出した男の後ろに続いた。
ふと、子供が辺りを見回すと下町とは違う高級そうな建物が並ぶ通りへと来ていた。
「・・まてよ・・。こんなところに?」
闇天の子供があたりを見渡す。自分たちの姿がその場に不釣合いなのに気がついたのは子供だけのようだった。
「ああ。親切に場所まで教えてくれたんだ。流れ者に親切だよな、ここの組織って」
あんまりにも無邪気な男の言葉に子供の顔から血の気が引いた。
(金ももらえないと考えた方がいいかもな)
「あ、あいつだ。」
道の向こうからターゲットがこちらに向かって歩いてきている。自分たちと違うリラックスした表情。まるで世界の違う人物だと見ただけでわかる。子供の頭の中では警鐘が鳴り響いていた。
「・・・やめないか?」
「チャンスだ! 今あいつを止めろ!」
連れの男の号令に似た声に子供の声はかき消される。小さく舌打ちすると子供は威力と範囲を加減した雷撃を突き出した拳に乗せてターゲットに向かって放つ。不意をつかれたターゲットはもろに雷撃を受けその場に硬直する。その姿に向かって男は得物を一閃させる。
抵抗も無くターゲットはその場に倒れた。動かなくなったその姿を男は貰ってきた水晶玉に写し取る。
「早く行こうぜ、長居したくねぇ」
闇天の子供は男を急かした。時間的に人気の無い時間だとは言え、子供には自分たちの生活とは違うリズムで暮らしている世界に見えた。いつ誰に見られるかわからず、不安が増す。そんな子供の不安にも気づかず、連れは念のためと再度証拠を取ろうとしていた。
「先行くぞっ」
足早に歩き出した子供の後を意気揚々とした表情で連れの男は追いかけた。
二人の後ろには寝静まった住宅街と一人の男の死体が転がっていた。


「ほら、見ろよ♪」
扉から出てきた男は人のいない路地まで連れの子供を引っ張ると皮袋の口を開けて中身を見せた。見た事もない量の金が詰まっている。
「・・・金・・出たのか・・」
「当たり前だろ。良くやってくれたって手渡ししてもらったぜ」
嬉しそうにいう男の顔を呆れたように見上げ、袋の中身を別に移すことを助言する。その言葉も聞かずに子供に一掴みの金を取り出して渡すと、男は軽く手を振った。
「先に宿帰っとけ。ベッドも使っていいぞ。俺は久しぶりに綺麗なねぇちゃんと楽しんでくるからさ♪」
まてと言いかけた子供の言葉も聞かずに、連れの男は夜の街に浮かれた足取りで消えて行く。闇天の子供は小さく溜息をつくと貰った金をしっかりと握り締め安宿へと足を向けた。


朝方になっても連れが帰ってくる様子はなかった。ベッドの足元には荷造りされた二人分の荷物。久しぶりに使うベッドに身体がなれないせいか子供の眠りは浅かった。いつも以上に耳は聞こえていた。やがて聞こえてくるこの時間帯に相応しくない人の足音。闇天の子供は身を起こし自分の荷物を身に着けた。足音を忍ばせ窓によると、こっそりと窓を開いた。夜明け前の暗闇に僅かに残る夜の灯りが浮かぶ。ロープの端ををベッドの足に結び付けると窓枠に置いた。部屋の扉をあけ、連れの男が入ってきたときには、闇天の子供は男の荷物を手にとって窓辺に佇んでいた。
「・・やばい・・」
男の言葉に子供は頷いた。男に向かって荷物を投げる。闇天の子供は呆然とした顔をしてる男から視線を外すと、ドアの向こうを窺った。階段を上がってくる何人かの足音。
「階段上がってくる奴らだけ・・?」
ロープを下ろしつつ子供は男に問いかける。
「・・・わからない・・。夢中で逃げてきたから。」
下に人気の無いのを確認すると、顎をしゃくって連れの男にロープを降りるように促す。闇天の子供の耳には用心深い足音が階段を上がりきろうとしてるのが聞こえていた。
「早くおりろ。」
言われるがまま男が下に降りて行く様子を見届けると子供は扉の向こうの様子を窺い続ける。足音をしのばせ扉の向こうでこちらを窺う気配。窓を背にした闇天の子供の片腕が電気の青い光に包まれる。向こうから攻撃してくる為には扉の前に立たなくてはいけない、そのタイミングを子供の耳は聞き逃すことがなかった。

―――ガガ・・・・ン!!!

闇天の子供の腕から放たれた雷撃は扉ごと外の敵を焼き尽くした。その結果をかくにんする事もなく、子供の姿は窓の外へ飛び出す。翼を翻し下へ降りつつ、男を運び終えたロープを断ち切る。
「・・おい・・」
「とにかくこの街を出よう」
下で待つ男にそう言い放つと子供は先に立って歩き出した。
「一体なにが起こってるんだ・・」
子供の連れは尚も状況が把握出来ていないようだった。
「たぶん・・利用されたんだろ・・・・」
この街では手を出せないターゲットを仕留めるための生贄に。子供の耳は油断することなく辺りの音を探り続ける。追っ手は先ほどの数人だけではなかったようだった。子供は追っ手のいないほうへと歩き出しながら街の地理を記憶できていない自分を呪っていた。有翼種なら地理の把握など必要ないのだ。だが子供の連れは飛べなかった。子供は追っ手に追い込まれているのに気づいていたが抜け道を探し出せなかった。
「・・・このままでは・・」
立ち止まってあたりを見回した。追っ手の少ないところを突破するべきか、このまま戦闘を避け逃げ道を探すか。判断しかねて子供は連れの顔を見上げた。連れの男は何を考えているかわからない顔でこちらを見ている。子供は安心させるように微笑んで見せた。
「・・大丈夫。助ける。」
自分のその言葉に決心を固めると子供は男の手を引き一つの建物の中へ入りこんだ。足音を忍ばせ屋上まで来ると下を覗き込んだ。
「・・・・まだ・・気づかれてないかな・・」
男の方を振り返ると建物の向こうを指し示した。建物の屋根が連なっている。
「おいらが助けるから、此処を越えて追っ手の後ろへ出よう。」
そういうと子供は連れの男に片手を差し出した。男は無言でいわれるがままに動く。人が一人では飛べない距離を、自分が浮力をつけることで子供は建物の屋根を数度、男を飛ばしてやった。追っ手の気配とすれ違ったのを確認しつつそのまま暫く屋根の上を移動する。
「・・・このまま見つからないように街を出れば大丈夫だ・・」
相変わらず連れの子供に読み取れない表情を浮かべたまま、男は子供を見つめていた。
「高いとこ嫌いか・・?」
読み取れない表情に不安感を覚えて子供が連れに問いかける。思いつめたように男が重そうな口を開きかけた。
「・・・なぁ、おまえ・・」
その言葉を闇天の子供は手を上げて押しとどめた。巻いたはずの追っ手が近くまでやってきていた。地面ではなく、二人と同じように屋根を伝って。
「街の外れまで来たってのにな・・」
子供は一番先の脱出に使ったロープを男の手に掴ませた。怪訝そうにそれをみる男の背中を追っ手とは反対へと押す。
「此処はおいらが何とかするから、いけ。」
「まてよ・・おまえ、なんで一人で逃げないんだ?」
男の言葉に闇天の子供は不思議そうに振り返った。男は子供には読み取れない表情で相手を見つめていた。
「なんで・・・?」
「おまえなら一人で逃げ切れるだろう・・?なんで俺なんかに付き合ってるんだ?」
闇天の子供は男から視線を外すと、背に迫ってきている追っ手に向き直った。子供の言葉を聞くまで動きそうにない男に何か言わねばと子供は思考を巡らした。
「・・・パン・・。美味かったからな・・。」
背中の男がどういう表情をしたのか、子供は見ることが出来なかった。追っ手はすぐ其処までやってきていた。男を庇いまだ見えない追っ手に向かおうとしている子供を、男は信じられないものを見るような目で見ていた。まだ背後にいる男に子供は声をかける。
「街を出ててくれ。そして別の街へ。追っ手をまいて追うから・・」
男は子供の背後で呆然とした顔で顔を横に振っていた。次の街の名前が何故でないか。頭のめぐりの悪い男の頭でも今回は理解できた。此処で別れると子供はいっているのだと。自分の所に帰ってこないかもしれないのだと。信じられないもの・・その子供は小さな身体に魔力をため男の目の前で自分の盾になろうとしていた。闇天の子供はそんな連れから意識を追っ手へと集中させた。逃げるならともかくも迎え撃った経験などあまりなかった。そして。足元の建物にはまだ眠っている人たちがいるはずだった。
(あんまり大きい力は使えない・・。狙い撃てればいいんだけど・・)
そんなことを思いつつ子供は振り下ろす両手に魔力を集め雷撃を追っての気配のある方向へ解き放った。建物の上に置かれていた荷物や廃材をなぎ倒し、その力は向こうの建物の屋上を一掃した。黒装束の影のような人影が三人ふらりと立ち上がるのが煙の向こうに見えた。暗殺専門のような凄み・・それを感じて子供は手の中の汗を握り締める。
その瞬間。子供の視界は黒い布によって遮られた。その上からきつく抱きしめられる。子供は今起きてる現状を把握できず動きを止めた。自分が魔力封じの布で包まれ、連れの男に抱きすくめられているのがわかったのは布の外で魔力弾が掠めて行くのに気づいたときだった。
「コレと俺の腹の盾でお前が死ぬことはないだろ・・」
布越しに聞こえてくる男の小さな呟き。男のあまりの力に動くことさえ出来ず子供は呆然とする。
「難を言えば・・若すぎることぐらいか・・」
その瞬間、布越しに凄まじい衝撃が襲う。二度、三度、続く攻撃。その度に自分を抱えているものの身体が弾ける様な衝撃を伝えてくる。だが、その腕はきつく万力のように固定され闇天の子供の動きを奪っていた。自分では何も出来ずに目の前で人の命が奪われていく、その恐怖に子供の頭は麻痺していった。何度目かの衝撃のあと男の身体は子供を抱えたまま静かにうつぶせに倒れた。布越しに暖かい血潮が子供の身体を浸していく。暖かいそれとは反対に、子供を硬く抱きすくめる連れの身体は冷たさを増していった。男が死んだ証拠を写し取る気配。子供の生死を確認することなく、追っ手は去っていった。たぶん子供の殺しまでは受けていなかったのだろう。
だいぶたって、子供はやっとのことで連れの身体の下から這い出すことが出来た。堅く抱きすくめたその腕は男が死んだ後も緩むことはなく、さらに始まった硬直になかなか動くことが出来なかったのだ。姿の変わり果てた連れの姿を見て闇天の子供はぼんやりと呟いた。
「ねぇ・・・あんた・・死んじまったの?」
転がったそれは答えることはなかった。男の身体におちる水滴を見つけ子供はぼんやりと空を見上げた。
「・・・天気・・いいのに・・。なんで雨が・・。」
散らばった荷物を集めると、子供は小さく溜息を力なく男の姿を後にした。子供の頬にだけ雨が伝っていた。

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:



1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新CM
[06/21 シャオ]
[06/21 シャオ]
[06/20 ラヴェンディラ]
[06/12 ラヴェンディラ]
[06/12 文]
最新記事
最新TB
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
Designed by TKTK
PHOTO by mizutama



忍者ブログ [PR]