黒の玉で書いた設定色々忘れましたw
記録残ってません!
覚えてるよって言う人連絡ください・・・・!(ぇー
彼は執務室へ向かう廊下を足取りも軽く歩いていた
浜辺までの遠乗りから帰ってきたところだった
「今度はシャオも連れて行ってあげよう」
いくら大型の猫とはいえ鞍に乗せるのは難しいだろうから自分のコートの中に入れて顔だけ出せば怖がらせずに乗せられるだろう
馬に乗ることなどそうもないであろう大事な人のそのときの反応を想像すると自然に頬に笑みがこぼれる
「きっと 大騒ぎするだろうな」
そんなことを考えながらアンスは執務室のドアを開けた
静かに開いたドアの向うに他人の気配を感じて彼は一瞬そこにとどまった
執務室の奥に設えてあるソファにラベンダーブルーの頭の闇天使が座り込んでいた。
ソファの上に足を上げ抱え込んで、テーブルの上の酒瓶を見つめている。
こうしてみると子供のように小柄であることがわかる
動かない闇天使をそのままにアンスは執務室に入ると扉を閉めた
リヴァルト国王の執務室にこの小さな闇天使が忍び込むことはすでに恒例であり、国王と闇天使の酒をめぐっての小さな攻防は王宮付きの兵士たちの小さな賭け事の種となっている。
国王が新しい酒を手に入れたと言う情報が流れるとこの闇天使はどこから聞きつけるのか、まるで自宅や友人の家に入るかのように国王の執務室に入り込んでくる
今回も国王に年代モノの好事家ならコレクションとしてそろえたいと大金を積むであろう酒が贈られたと王宮のうわさを聞きつけたに違いない
厳重な警備をすり抜けて(この小さな闇天使に言わせれば「ザル」との酷評が下るのだが)部屋に入り込み、隠し扉の中にある酒を探し出したようだ
見つけた酒はいつもすべて飲み干されてしまうのだが、その闇天使が珍しく、目的の酒瓶を前にして栓を開けもせず座り込んでいる
「やぁ、いらっしゃい やっとラベちゃんにも希少性をわかってくれる酒が見つかった、ということかな」
アンスウェラーは乗馬用の手袋をしたままの手でその古い酒瓶をそっと持ち上げた
人のよい彼のこと 取り上げて一人で飲み干すというつもりもなく、若干しつけのなってないこの闇天使を友人として二人で酒を味わおうというつもりだった
執務机に瓶を置き、封を切るためのナイフを探して片手を泳がせる彼に闇天使はポツリときいた
「それ、飲むのか?」
手を止めてアンスは闇天使のほうを見た
「何百年も前の年代物の蒸留酒だよ?ラベちゃんは飲まないの?」
「たぶん、死ぬぞ?」
アンスは闇天使から酒瓶に視線を戻した
古いビロードの布に包まれ半分ほど瓶の首が顕になっている
コルクの栓が蝋で封印された隙間からわずかに見えている
「毒?」
闇天使は両手でひざを抱えたまま首をかしげた
「おれがわかるのは、おれがそれを飲んだら自分の意思で身体を動かせなくなる気がするってこと」
ようはただの勘である
ただ。今までこの闇天使は生死の境を此の勘だけで生き抜いてきた
「おれは、それは飲めない」
すごく残念そうな顔で酒瓶を見つめながら無類の酒好きの闇天使は言い切った
───彼女の言うことが真実であるとするのなら
アンスは手袋を嵌めていた幸運に感謝した
注意深く手袋をはずし兵士を呼ぶためのベルを鳴らす
「そんなヤバイ酒を飲もうとするなんて・・」
闇天使はアンスのほうを見て小首をかしげた
「シャオに、振られたか?」
アンスウェラーのこめかみがぴくりと引きつった
礼儀正しく入ってきた兵士に引きつった笑顔を浮かべ、アンスは命じた
「ラヴェンディラ嬢を牢屋に案内してくれるかな」
抗議の声も上げず特に抵抗もせず、闇天使は軽く肩をすくめただけで兵士の丁寧な案内に腰を上げついていく
「たまには反省しなくちゃダメだよ?」
アンスのその言葉に闇天使が見せた小さな舌は前を歩く兵士にも、後ろのアンスにも見られることはなかった
「あと文天祥か、宮廷魔術師をだれかここに」
闇天使の背中を見送った後、机に視線を戻したアンスの頬がわずかに引きつった
皮の手袋は瓶に触れた部分が音もなく黒く爛れていた
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