画像まで用意できなかったのが困ったとこですが
これでらべも竜つきとなります。。。。
「よう」
闇エルフが呼び鈴を押す前にその扉は開かれた。
「ちびすけは置いてきてくれたみたいだな」
闇エルフを屋敷の中に引き入れながら闇天使は横に咲いていた白い花を手折り、あたりの様子を確認したようだった。
「手紙に書いてあったからね」
「うーは連れてきてもよかったのに」
客人の先に立って歩き出しながら闇天使は言う。
「いったい何事?」
先を歩くラベンダーブルーの頭に文天祥は尋ねた。
質問にあいまいに答えながら闇天使は普段他人を通さない屋敷の奥へと足早に進む。
「へぇ このあたりは初めてだな」
屋敷の大きさに感心しながら闇エルフはその後ろをついていく。
奥の一角で闇天使の足が止まった。
扉を開け、闇天使は無言であごをしゃくり、友人を中に誘った。
「いったい何があるんだい?」
薄暗くカーテンが閉まったその部屋の一隅を隙間から漏れた光が部屋をゆるく照らしていた。
その光の届かない一隅に闇エルフの意識は引き付けられる。
暗く沈んだ其処に眼を凝らすとあたりの闇を吸い込んで黙り込んだような「それ」が無言で闇エルフを見詰めていた。
「・・・っ!ディラ!」
驚愕の声で若い友人の名を叫ぶ。
闇エルフはその肩をつかんで揺さぶった。
「何持ってきてるんだっ 確かに暗黒竜自体は悪いものじゃないけどっ」
簡単に人の手に負える物じゃないと言いかけて、闇天使が苦笑いを浮かべているのに気づく。
「ディラ、笑い事じゃ・・」
「おれもまったく同じ反応したからさ」
不謹慎さを咎める友人に闇天使は手に持っていた白い花を手渡した。
不思議そうに見返す闇エルフに闇天使は顎をしゃくって座り込んだ「それ」を指し示す。
花と友人を見、いわれるままに再度座り込むそれをみやる。
「・・・?」
闇エルフは己の目を擦った。
ゆらんと白い花が香った。
「暗黒竜じゃないのか・・」
「たぶんね」
今度は手にした花と奥の卵を比べながら首をかしげる闇エルフに此れまでの経緯を掻い摘んで話して聞かせる。
「卵なのに既に時空を操るわけ?」
「良くわかんないけどね」
ラヴェンディラの言葉に闇エルフは片手で片面を覆った。
「良く分けわかんないの見つけてくるなあ」
「ちがーう 今回はおれが見つけられたんだ・・・」
今度は何物か確認するために闇エルフは「それ」に向かって数歩進んだ。
「何だろうってことで、俺は呼ばれたの?」
卵に向かって進む闇エルフに闇天使は小さく首を振った。
「それはまあ出てくりゃ判るからどうでも良いんだ」
その答えに闇エルフは小さな友人を振り返った。
「孵らないんだ」
闇天使は助けを求めるように知識ある年長の友人を見つめていた。
「竜の卵なんかいつ孵るかなんて個体差なんだから・・」
「だっておれを呼びつけたんだよ?」
既にその時期は来てる筈とその目が訴えてた。
「卵からは何もいってこないの?」
何か読み取れるだろうかと闇エルフはその手を卵の上にかざしてみた。
「うんともすんとも・・・」
友人に倣って「それ」を此処に連れてきてから何度もしたように卵にその手のひらを、闇天使もかざしてみる。
「闇の様だけど光にも反応するし、どれで同調すれば良いのか難しいな」
「闇と光」
闇天使がポツリとつぶやいた。
「最闇の御母神より滲み出たカケラ」
更にポツリとつぶやく。
「始まりにして終焉、全てであり無であり、これは混沌、それは・・」
闇天使の口の中でその名前は続けられた。
───Χαοσ───
「お!ディラ・・!」
友人の声に闇天使の意識は引き戻される。
見れば「それ」はゆらりと揺らめき音もなく姿を変えようとしていた。
「ぇ?」
「今呟いてたの、卵からのメッセージか何か?」
闇天使は闇エルフの声も耳に入らない様子で変化を続けるそれを見つめた。
「えぇぇぇぇぇぇ?!」
闇天使の絶叫の中、それは幼い竜の姿をとり大きな赤い目をぱちりと開いた。
「まて!おれ今何した?!」
「開放の呪文か何かもらったとかじゃないの?」
ちんまりと置物のように鎮座する生まれたばかりの幼竜の前で闇天使は膝をついた。
「開放というか・・・生まれさせたというか・・・」
頭を抱えている闇天使を不思議そうに闇エルフは覗き込んだ。
心配そうなその視線にも気づかない様子で闇天使は取り乱した様子でぶつぶつと呟いている。
「やばい、、おれこいつの名前知っちゃった・・・」
「ディラ・・?」
闇天使は頭を抱えながらもようやと身体を起こした。
黒い竜は赤い目をぱっちり開いてその姿を見ている。
「とりあえず、此れがしゃべれるようになってからかな・・」
やっと闇天使は幼い竜をしっかりと見つめた。
「ディラ、この竜と契約するつもりなんだ?」
友人の声に小さく頭を振った。
子竜は黙って見上げている。
「まあ それは此れがしゃべれる様になってから決めさせる」
あくまで相手次第と言う様子の闇天使が、名前を与えないと喋るまでの成長ができない様子だと気づくまでに
これから幾年もの歳月がかかったのはまた後日の話である。
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