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小鬼の日常 およびそれ関連のお話など わからない方は回れ右奨励
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2012/06/26 (Tue)
天狼からもらった許可がやっと使えたという
ん年越しとかになったのは平にご容赦

ちょい役で申し訳ないw

こんなの自分じゃねぇといったご不満は投げ込んでくれぃw




のろい船が行き着いた先は小さな港だった。
赤い陽炎の立ち昇るその土地は船で入れるところは狭く小さく、闇天使が出てきた海の町の三分の一ほどもなかった。
港町はその狭いスペースを潰しあう様に作られていて、建物と建物、人と人の肩や身体がぶつかり合うのが当たり前といったようなところだった。
乾ききった大地から水に飢えて水辺にと集まったかのようなぎらぎらとした人込み。
闇天使はそのひとごみを器用に人にぶつかる事もなくひょいひょいとよけてはうろうろと歩いていた。
どこで情報を得ようか物色していたそのときに闇天使のその目は見覚えのある後姿を見つけた。
赤く焼けたこの地で人目を引く青い青い髪の色。

「天狼じゃん・・それも軍服っぽいの着てるし・・」

気配を消してすいすいと、軍人仲間らしい数人と歩いていくその後姿をつけて確認すると、闇天使はそれに向かって殺気を飛ばしてみる。
瞬間相手の手が動いて自分の首筋を撫でる。
周りの連れに笑いながら何事かいいながら、やがて青い髪の男は連れを先に行かせて一人になった。
そして人込みの中、後ろを振り向く。

「そこにいるのは判ってんだ。こそこそしねぇで出て来いラヴェ」

仁王立ちで腕を組んだ男の前で闇天使はにこやかに片手を挙げた。

「よぅ よく気づいたな」
「あんな殺気人にぶつけといて気づかないもないだろうが」

闇天使より一回り以上でかいその男は上からぐりぐりと拳で小突いてくる。
それを笑いながらよけ闇天使は男に歩き出すよう促した。

「そんなの着てるんだ、どっかなじみの店とかもうあるんだろ?」
「この国の酒はキツイぞ 後でなくなよ?」
「誰に言ってんだ?」

戯言を言い合いながら繁華街らしい通りをひょいと曲がったあたりに男は連れを誘った。
薄暗い店の中、慣れた様子で男は奥へと歩いていく。

「ここから僅かだが海が覗けてな 朝まで飲むと焼けた海が拝めるって言う特等席だ」

男は自慢そうに紹介しながら座ると、闇天使に自分の向かいの席を勧めた。

「下級兵士か、お前だったらすぐトップだろうに」

互いを宿敵と呼び合う旧友の肩に記された階級票を指ではじいた。
その様子に苦笑いを浮かべ男はグラスの酒を煽った。

「路銀稼ぎのアルバイトのつもりだからな 名前も出してねぇさ」
「用心棒のほうが儲からない?」

ちらっと酒場の店内に視線をめぐらし闇天使は首をかしげた。

「他だとそうだけどな」
「あんまり羽振りよさそうな国じゃなさそうだけどなぁ」

闇天使の不思議そうな声に男は肩をすくめた。
青い青い髪が揺れる。

「傭兵を集めてるんだろうな。ま、俺は金がたまったら出て行くが。」
「富国とばして強兵から?」

闇天使の言葉に皮肉めいた笑いが混じる。

「俺みたいなごろつきが集まってるぜぇ?」

ごろつきには到底見えない不敵な笑みを浮かべてセイリオスは酒を煽った。

「どっか攻めるのか?」

男のグラスにきついと男が評した酒を注ぎながら闇天使は尋ねた。
男の片眉があがった。
青と水色のオッドアイが闇天使を見ている。
お前が聞くのか?という顔だ。
この国に来る前の出来事を思い出して闇天使は眉をしかめた。

「龍都は戦争なんかしないぞ?」
「えー 俺らはそうは聞いてないけどな」

ニヤニヤしてこっちを見る男に闇天使はため息をつきながら更に酒を勧める。

「男たちが褌で右往左往してるのは戦争準備のためじゃなく、祭りの準備だぞ」
「ちぇ 残念だ またお前と仕合えると思ったのによ」

酔いが軽く回り始めたのかにやにやしながら男は物騒なことを言う。

「んじゃなによ?ここの軍隊は龍都を攻める為に強化してるってことか?」
「遠く平たくまとめるとそういうこともあるかもしれないな」

これ以上はいえませんというように、にぃっと笑って男は背筋を伸ばした。
そんな男の前に闇天使は友人の家で作ってきた釣りの餌をおいた。
暗い店の中、テーブルと闇天使の手のひらの中怪しい魔力の光を放ち、輝いた。

「ん? なんだ、こりゃあ」
「こういうのを探せとかいわれてねぇの?」

闇天使の言葉に男の眉が寄った。
暫く考え込んでいたが何かを思い出したように顔を上げた。

「そういえば、俺ら新参者じゃないほうに何か言ってたな」

その先を促すように闇天使は傍らの瓶を取り上げ男にグラスを持つよう無言で促す。

「魔力の詰まった、水色の石?」

闇天使は海底都市でであった男の言葉と重ねて小さくうなづいた。

「なるほど、こういうのも水の色といえるか」

闇天使の手から無造作にそのガラスを取り上げると、男は店の灯りにかざした。

「言われてるのとは違うとは思うけどな」

子供の様に透かしたり転がしたりして見てる男を肴に闇天使は自分のグラスに瓶を傾けた。
入ってるのは清水。
この国では純度の高い綺麗で美味しい水は酒より高い。

「これ もらってもいいのか?」

ペンダントになっているそれを男は手に握り締めた。
闇天使は返事の変わりにポケットから片手を取り出し同じものを数個更に見せた。

「ほw」

男は遠慮なく、と自分の胸ポケットに手の中のそれを押し込んだ。

「女にでもやるの?」
「いや」

そんなのいるかと言う風情でグラスをあけるとにぃと笑う。

「らしきもの、確定できないものでも金一封はだす、とな」
「一個でいいのか?」

飲みながら男はうなづく。
埃をかぶった窓の外は暗く静まり返って見える。

「おまえと仕合うチャンスがあるなら暫く居てもと思ったがそうじゃなさそうだし、そろそろこの国をでるさ」

最後のあたりは若干舌が回るのを拒否しているようにも聞こえる。
そんな天狼の声を聞きながら闇天使はふと何かの気配を感じて窓の外を見据えたまま意識を店の中へと広げた。
何も怪しい気配はない。
ただ悪意も善意もない視線が其処を見ている、そんな気がして闇天使は店に視線を戻した。
道で見知らぬものがぼんやりと見ていたその視線が合い、驚いて目をそらしたかのような感覚。
気がつけば店は変わりなく、席の前の男は気持ちよさそうに酔いつぶれていた。

「あらぁ またヴォルフさん酔いつぶれちゃって!」

酒のお変わりを持ってきた女が明るい声を張上げたが男は起きる様子もなく寝息を立てている。

「いつもかい?」
「ええ それでね夜明けに窓から外見ながら泥のようなまずいコーヒー飲んでかえるんですよ」

慣れた手つきで店の物らしい肩掛けを男にかけてやりながら女はいった。

「んじゃ、放って帰っても大丈夫かな?おれまだこいつのやさ聞いてなくてさ」

立ち上がりながら闇天使は女に尋ねた。

「あいあい 大丈夫ですよ♪ ついでにお客さんの飲み代もこん人からもらっときますよ♪」

歌うように女は言いながら席を離れた闇天使に手を振って見せた。

「ああ 頼むよ おきたらよろしく伝えてくれ」

背を向けて片手をあげてそういうと闇天使は店の扉を開けて外へと出た。
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